セルフケアで癒やすトラウマ

トラウマによる不眠に役立つ就寝前のリラクゼーション:穏やかな眠りを誘う身体感覚への集中

Tags: トラウマケア, 不眠症, リラクゼーション, マインドフルネス, セルフケア

はじめに

過去のつらい経験が原因で、夜なかなか寝付けない、眠りが浅く途中で目が覚めてしまう、あるいは悪夢にうなされるといった不眠の悩みを抱えている方は少なくありません。心身が常に緊張状態にあると、リラックスして眠りにつくことが難しくなります。

この記事では、自宅で一人でも手軽に実践できる、就寝前のリラクゼーション方法として「身体感覚への集中(ボディスキャン)」をご紹介します。心身の緊張を和らげ、穏やかな眠りへと誘うための一助となれば幸いです。

身体感覚への集中(ボディスキャン)とは

「身体感覚への集中」は、身体の各部位に意識を向けることで、現在の自分の状態に気づき、心身の緊張を解きほぐしていくリラクゼーション技法です。これは「マインドフルネス」という、今この瞬間の体験に意識を向ける心のあり方に基づいています。

なぜトラウマによる不眠に有効なのか

トラウマの影響で不眠に悩む場合、心は過去の出来事や未来への不安といった思考のループに囚われがちです。身体感覚への集中を行うことで、意識を「今ここ」の身体の感覚に引き戻し、思考の働きを一時的に鎮める効果が期待できます。

また、身体の緊張を意識的に緩めることで、心身を活動モードにする「交感神経」の働きが落ち着き、リラックスモードにする「副交感神経」が優位になります。これにより、自然と心身が穏やかな状態へと導かれ、眠りにつきやすい準備が整います。

身体感覚への集中(ボディスキャン)の実践方法

就寝前、心身を落ち着かせたい時に以下の手順で試してみてください。特別な道具は不要です。

準備

  1. 環境を整える: 静かで、落ち着ける場所を選びましょう。ベッドの上や、床に横になるのが理想的です。座って行う場合は、楽な姿勢で背筋を伸ばし、身体が安定するようにします。
  2. 照明を落とす: 部屋の照明を暗くするか、消しましょう。
  3. 目を閉じる: 準備ができたら、ゆっくりと目を閉じます。

手順

  1. 呼吸に意識を向ける:

    • まず、数回、ゆっくりと深呼吸をします。息を吸い込むときはお腹が膨らむのを、吐き出すときはお腹がへこむのを感じましょう。
    • 呼吸が自然なペースに戻ったら、無理に呼吸をコントロールしようとせず、ただ自分の呼吸が身体に出入りする感覚に意識を向けます。
  2. 足の指から意識を向ける:

    • 意識を右足の指先に向けます。それぞれの指が靴下や布団に触れる感覚、温かさ、重さなど、どのような感覚があるか、ただ観察します。
    • もし緊張を感じたら、息を吐くときにその緊張が体の外へ出ていくようなイメージを持ってみましょう。
  3. ゆっくりと上へ移動:

    • 意識を右足の裏、かかと、足首、ふくらはぎ、膝、太ももへと、ゆっくりと時間をかけて移動させていきます。それぞれの部位で、どのような感覚があるかを丁寧に感じ取ります。
    • もし特定の部位に強い不快感や痛みがある場合は、無理に意識を集中させず、その周辺に意識を広げても構いません。
  4. 左足、胴体へと移動:

    • 右足が終わったら、同じように左足の指先からゆっくりと意識を移動させ、全身の感覚を丁寧に辿ります。
    • 足が終わったら、お腹、腰、背中、胸へと意識を移し、内臓の感覚や衣服が触れる感覚、姿勢によって圧がかかる部分などを感じ取ります。
  5. 腕、手、肩、首、顔へ:

    • 次に、指先から腕、肩へと意識を移動させます。それぞれの関節や筋肉の感覚に注意を向けましょう。
    • 首筋、顔、頭頂へと意識を運び、顎や眉間、額の緊張がないか、確認します。可能であれば、その緊張が緩んでいくのを想像しましょう。
  6. 全身の感覚を味わう:

    • 最後に、全身が一つに繋がっている感覚、身体全体がリラックスして、ベッドや床に沈み込んでいるような感覚を味わいます。
    • 心臓の鼓動や呼吸の音、周囲のわずかな音など、聞こえる音にも耳を傾け、穏やかな時間を過ごしましょう。

実践する上でのポイントと注意点

おわりに

トラウマによる不眠はつらい症状ですが、ご自身のペースでセルフケアを取り入れることで、心身の緊張を和らげ、少しずつ穏やかな眠りへと近づくことができます。今回ご紹介した身体感覚への集中は、自分自身を慈しむための大切な時間となるでしょう。

焦らず、ご自身の身体の声に耳を傾けながら、心身の回復へ向けた一歩を歩んでいただければ幸いです。